●年を重ねる度に...

ダブが旅立って7年が過ぎた。
なのに想い出は色あせないし、
年が積み重なるにつけ、ダブが旅立った日のことがより克明に思い出される。
文章がもっとうまかったら、
この思いもよらない感情をうまく伝えられるのに...。

きっといなくなってしまったことを
自分の中で受け止めることができたから、
心の奥に鍵をかけてしまって置いたものがでてきたのかもしれない。
だから、今更あの時のことを書いておきたくなった。





旅立った日
とうとう庭に出る元気もなく、大量の嘔吐をする。
辛そうな表情で、甘える声を出し見つめる。
本当は辛いのに引き止めている私のせいで
旅立つことを踏みとどまっていることが
その表情からわかった。
『もうがんばったからいいよ。お別れしよ。』
そして、別れの言葉をダブに伝えると...
静かに目を閉じ、眠るように息を引き取った。

それから、何分もしないうちに息子が帰ってきた。
玄関に入るなり、『ダブは大丈夫?』
『もう、ディーのところに行っちゃったんだ...』
別れが言えなかったと泣き崩れる息子を見て
私の悲しみは心の深いところに仕舞い込まれて行った。
私はちゃんと別れが言えた...
それはどんなにか幸せなことだったのかと
思わずにいられなかったから...。

悲しい気持ちは、未だにまるで鍵がカチッと開くように
こぼれ出して来る。
私はまたあわてて、別れの時の会話を思い出して、ふたをし、
鍵を閉めなおす。
でも、それもそろそろしなくていいかもしれない
と思える時間が過ぎている...。


●クリスマスオーナメント

息子が幼かった頃は、
『クリスマスツリーはいつ出すの?』
とせがまれたものでした。

思春期を迎えた息子は、もうそんなことは言いませんし、
ツリーを出すのもためらうここ数年でした。
今年はどうしようかと思いつつ、やっぱり楽しい気分になるから飾ろうと
ひとりでクリスマスグッズを出しながら、
『飾り付けしてくれる?』と聞いてみた。
『うん!』きもちいい返事が返ってきた。

今年は白いクリスマスツリーにしよう。
そして、クリスマスオーナメントは、
これを使おう。
バランスを見ながら丁寧に飾り付ける姿が
とても微笑ましい。

覚えているかな〜?
このオーナメントはあなたが小学校1年の時に
欲しくて、自分のお小遣いで買ったのよ。

きっとその飾る手つきをみていると
あの頃のあなたの気持ちに戻っているんだよね...。